夢夜へのいざない Journey to Dream Nights
第十二章「青い鳥」モーリス・メーテルリンク著
Journey to Dream Nights Chapter 12
“L’Oiseau bleu” by Maurice Maeterlinck
皆の衆、ようおいでなされた。
今宵は老婆の願いを叶えるため長い長い旅にでたチルチルとミチルの物語の続きを話そうかい。
そう、光に導かれ二人が訪れた「未来の王国」の話じゃ。
青く輝く宮殿のずっと奥、誰よりも二人の訪問に胸躍らせる一人の少年がおった。
「こんにちは。ごきげんいかが?」
“まだ生まれない子供達”の中で、
チルチルと同じ瞳をしたその少年だけが
二人の名を嬉しそうに呼び、キスをしたんじゃ。
「ぼく、きみの弟になるんだもの。来年の復活祭の前の日曜日にね。」
誰もが幸福な何かを準備して、時の扉から生まれ出でる未来の国。
弟の手に握られた幸福にチルチルは気づいておったのかのう・・・
そう、彼の未来には
「猩紅熱(しょうこうねつ)」と「百日咳(ひゃくにちぜき)」と「麻疹(はしか)」が待っておったんじゃ。
でも幸福の多寡は決められないんじゃ。
たとえ数日であっても、チルチルの弟として生まれる事が
少年にとってどれほどの意味があったんじゃろう。
たとえ、幸せの青い鳥でものう・・・