リードキャラクターコンセプトアーティスト
生江 亜由美氏 スペシャルインタビュー

スペシャルインタビュー

「ファイナルファンタジーXIV」(以下、FFXIV)と「ボークス」のコラボレーションによって誕生した
ドルフィードリーム(以下、DD)ヤ・シュトラ。

その監修には、FFXIVのリードキャラクターコンセプトアーティストである生江亜由美氏が携わっており、
細部に渡りこだわって製作されている。
そんな生江氏にDDヤ・シュトラについてのインタビューを行った。

生江 亜由美氏

生江 亜由美
ファイナルファンタジーXI、XIIに携わり、FFXIVの立ち上げ時から配属。
リードキャラクターコンセプトアーティストとして数々のNPC、装備、武器などを手がける。


◆まずはじめに、「キャラクターコンセプトアーティスト」とは何か、教えてください。

生江 亜由美氏(以下、生江): 文字情報や言葉から、イメージを膨らませ視覚化していく仕事になります。

FFXIVのキャラクターデザイン制作は、まずはディレクター(またはプランナー)から頂いた設定をもとに、キャラクターコンセプトアーティストがヴィジュアルイメージを提案し、ディレクターと協議しながらイメージを決定していきます。

設定画

イメージが固まった後は、3Dチームがゲーム内のキャラクターデータを制作する為に必要な情報をイラストの中で細部まで作り込む事で、具体的な形にしていきます。 バランスを見ながらシルエットを調整し、正面図・横図・後ろ図を詳細に描きます。その際、質感やアクセサリーの意匠なども可能な限り細部まで作り込んでいきます。
今回ボークスさんとコラボしたヤ・シュトラはFFXIVの物語に登場するキャラクターになります。
ヤ・シュトラは長い物語の中で何度か衣装替えをしているのですが、コラボする運びとなった「漆黒のヴィランズ」でのヤ・シュトラの衣装は私がデザインさせていただきました。


◆ヤ・シュトラのデザインコンセプトや、衣装へのこだわりを教えてください。

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生江:「黒い魔女」という設定の下、「限られた物資の中で、様々な古布の端切れをつなぎ合わせて作ったローブ」というコンセプトでデザインしています。
上半身のフェティッシュなシルエットと羽根のエクステでキャラクター的な魅力を作り、指輪やブローチ・靴裏のディテールなどで魔法使いの雰囲気を盛り上げています。

「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリー・ポッター」のようなファンタジー世界が好きな方にも刺さるようなデザインを目指しました。


◆普段、こういった監修はされる事はあるのでしょうか。
またフィギュアだと通常、吉田P/Dが監修をされている印象がありますが、生江さんが監修されることになった経緯などをご説明いただけると幸いです。

生江:プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹(以下、吉田P/D)から依頼を受け、サンプルが出来上がった状態で吉田P/Dから私へバトンタッチする形で引き受けました。吉田P/Dから直接理由を伺ったわけではないのですが、公式のイベントで吉田P/Dが着用しているコスプレ衣装などは、私の方で監修を担当させていただいており、ドールは衣装の要素の比重が高いので、バトンが渡ったのではないかと予想しています。

もともと、人形作家の天野可淡さん・恋月姫さんの作品が好きで、学生時代から展示会などには足を運んでいたので、DDの監修のお話を受けた際は、緊張と嬉しさとが入り混じっていました。


◆ドルフィー(ドール)だからこそ再現できたポイントや、こだわって再現したポイントなどを教えてください。

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生江: 衣装は制服などのデザインやきっちりかっちりしたデザインラインであれば、型紙を作りやすく、素材も集めやすかったのだと思うのですが、「古布の端切れをつなぎ合わせた」手作り感や風合いやランダム感を重視したデザインなので、ドールの衣装としての制作難易度はかなり高かったと思います。

一見「黒いローブ」ですが、DDヤ・シュトラは同じ黒色の中でも様々な質感の素材を組み合わせて制作しています。
フィットした上半身・スカート裾の複数の層になったギャザーやプリーツによるボリューム感は、実際の布で作るとなるとかなり難しい複雑なパターンになるのですが、見事に再現していただきました。

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アクセントにしているアクセサリーパーツは特にクオリティが高く、背筋にある六角形のアジャスターパーツはアザミをモチーフにしているのですが、初回サンプルの段階から細部までとても精巧に作られていて感動しました。
胸元のブローチや指輪も併せて見ていただきたいです。


◆造形・メイク共に、ただヤ・シュトラに似せるのではなく、キャラクターの再現性とドルフィー(ドール)としてのバランスの調和などが難しかったのではないでしょうか。

生江: ヤ・シュトラを単に「フィギュアとして再現する」のではなく、DDのファンのお客様にもアプローチできるよう、過去に制作されたDDと並べても違和感のないように…という方向性での監修だったため、キャラクターとしてのヤ・シュトラとDDとしてのバランスの調和を取るのがとても難しかったです。

DDシリーズのプロポーションはゲームのヤ・シュトラのプロポーションよりも等身が低いこともあり、お顔立ちは目がとても大きくデフォルメされているので、ボークスさんからご提示いただいたところから、ヤ・シュトラのクールで落ち着いた雰囲気を表現していただけるよう、調整していただきました。
DDヤ・シュトラのお顔は途中経過のサンプルですら魅入られるような存在感があり、思わず頬や髪を撫でてしまっていました。

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◆セット内容には、杖(ナイトシーカー)等のパーツも含まれています。

生江: 付属の杖も再現度がとても高く、細部までエッジが立っておりゲーム画面から取り出したかのようでした。杖のデザインは「魔力が宿った古木」をコンセプトにデザインしたので、使用感や風合いが出るように仕上げていただきました。


◆完成したサンプルをご覧になっての感想をお願いいたします。

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生江: 「人形には魂が宿る」という言葉がありますが、まさにその言葉を体感しました。

完成品を見た場所はいつもの会議室だったにも関わらず、ファンタジーな生命体に対面したような、小さな妖精に出会ったような感覚があり、今にも動き出しそうな存在感に圧倒されました。 突然目の前にファンタジーの生き物が出現したような感動的な瞬間でした。
この感動の源は、ボークスさんの培った造形力や職人魂の為せる業だと思います。


◆最後に、皆さんへのメッセージをお願いいたします。

生江: ボークスさんとの打ち合わせでは、耐久性を兼ねた素材収集の難しさ・再現~量産への難しさを教えていただきながら、多くのフィギュアやグッズ制作に携わっているスクエニマーチャンダイジングディビジョンのスタッフも打ち合わせに参加し、経験上この素材は難しい…とか、こういう手法でどうでしょう?など、毎回かなり熱い内容の打ち合わせが行われていました。

無知な私のイメージ先行のリクエストに対し、「とことんやるのでたくさんリクエストしてくださいね!」と、いつも前向きに応えていただき、素材集めやブラッシュアップをしていただきました。

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ボークスさんのサイトでは、森の中のようなロケーションで撮影した写真でDDヤ・シュトラを素敵に紹介していただいていますが、DDには実物と対峙した時にしか得られない感動があります。
【DDヤ・シュトラ展示キャラバン】として、ボークスさんの店頭では実物の展示もされているので、お迎えを考えている・いないに関わらず、是非一度DDヤ・シュトラに会いに行ってみてください。きっと心揺さぶられるような感動を味わえると思います。

◆ありがとうございました。

ファイナルファンタジーXIV

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